第510回 とり豆腐
“ふつうで美味しい”とは、今日も明日も美味しくて、10年後も食べたいと思う味。
日本各地のおいしいものを40年食べ歩いた、元「dancyu」編集長・植野広生が、大好きなお店の“ふつうで美味しい”料理を教えてもらい、「植野食堂」のお品書きに加えていきます。
本日はもう一度訪ねたかった「あの店の別メニュー」。
舞台は銀座。昭和の面影を今に残す大衆割烹「三州屋」。
5年前に教わったのは、大粒の牡蠣を軽やかな衣で包んだ、旨味あふれる牡蠣フライ。あの味が忘れられず、再び暖簾をくぐります。
今回、植野さんがどうしても教わりたかったのは、創業以来の看板メニュー「とり豆腐」。
黄金色に澄んだ出汁。ふっくらとした鶏肉。やさしく寄り添う木綿豆腐。あっさりとした口当たりの奥に、鶏の深いコクがじんわりと広がる、唯一無二の一品です。
1968年開店、先代の味を受け継ぎ、店を守るのは2代目店主・岡田孝さん。プロレスラーとしても活躍しながら、父の教えを胸に毎朝市場へ通い、自らの目で素材を選び続けています。
リングと厨房、ふたつの舞台で闘う、その素顔とは――。
銀座で朝10時半から夜10時半まで通し営業。いつ訪れても、変わらぬ暖かさで迎えてくれる三州屋。
受け継がれた暖簾の先で、今日もまた一杯の「とり豆腐」が、誰かの心と体をやさしく満たします。
本日も作り手たちの優しさをお腹いっぱいいただきます。
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