最終章のラブレター ~石川さゆり新曲秘話~
歌謡界を代表する歌手の一人、石川さゆりさん。紅白歌合戦でも紅組で最多出演という彼女の新曲「棉の花」は、大阪に深いゆかりのある唄です。
曲名にある「棉(わた)」とは、大阪府東部の河内地方で生産される「河内木綿」のこと。そして明治時代、河内木綿の現場で働く貧しい女性たちを想い、作曲されました。
かつて盛んだった河内木綿は、明治維新とともに安い外国産の綿が波のように押し寄せ、衰退の道をたどりました。 木綿づくりの仕事を失った女性たちは、生活を守るためにひたすら働き続けて、命を落とす人も後を絶ちません。
それでも純真な心を失わず、無垢で可憐な棉の花のように 懸命に生きたという切ない物語。棉の花が咲き始める夏を思って…作詞を手掛けたのは、浪花の作詞家、もず唱平さんでした。
名曲「釜ヶ崎人情」でデビューし、「花街の母」などを作詞したヒットメーカーとして知られ、2024年には古賀政男さんや石原裕次郎さん、美空ひばりさんなどと同じく 「大衆音楽の殿堂入り」を果たします。ところが、体調不良を理由に2024年夏、引退宣言をし、筆を置いてしまいます。
音楽仲間もみんな逝ってしまい、終活も全て終えた。そんな中、「引退なんて聞いていません」と作詞を依頼したのが石川さゆりさんでした。石川さんに半ば押し切られる形で書いた詩を「作詞家人生最後の曲になるだろう」と話す、もずさん。一方の石川さんは、もずさんや作詞家たちから受け取る歌詞は「まるでラブレターのようだ」と答えます。
5月には、大阪・関西万博の会場を初めて訪問します。長年、名前のように「平和」を「唱える」 活動を続けてきたからこそ、紛争地のパビリオンを訪れ対話をしたかったといいます。終活も終えた今、願うことは…。
同じころ開かれたのが、大阪・河内での石川さゆりさんの新曲披露コンサート。そこで、もずさんと石川さんが再会。楽屋で2人の対談が始まったのです。
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