テレビ寺子屋
趣味/教育
テレビ寺子屋【少年の躓き/菊地幸夫】#2405
「少年の躓き」
菊地幸夫(弁護士)
12月1日 日曜 4:30 -5:00 さんいん中央テレビ1
私が弁護士活動の中で力を入れてきた「少年の非行事件」についてお話しします。ある時、強盗致傷事件で逮捕された1人の少年の国選弁護を担当することになりました。最初は会話もうまくいきませんでしたが、面会を重ねるうちにだんだん心を開き話もできるようになってきて態度にも変化が出てきました。反省も深まり、「更生が期待できる」ということで、少年鑑別所から一度外へ出して様子を見る「試験観察」が認められたのです。
私の知り合いの解体業の会社で2カ月頑張り通しました。面会する中で私は少年の頭の回転が早いと感じ、「定時制に行って勉強してみないか?」と、何度も伝えていました。そして、いよいよ審判(裁判)の日を迎えます。裁判官が処分を言い渡す時、彼の目をじっと見て「私は一回君を信用する。社会に戻りなさい」と伝え、「保護観察」になりました。そこで彼に関する私の仕事は終わりましたが、何年か経ち一通のハガキが届きました。
差出人はその彼で、「菊地さんが言った通り定時制に行き、この春大学に合格しました。しっかりした社会の一員になれるようにがんばります」と、書かれていました。嬉しかったですね。彼の頑張りと、「君を信頼しよう」という裁判官の言葉、さらに「頭がいいぞ、勉強してみろ」と伝えたことが大きかったのだと思います。大人から「君を信頼する」「勉強したらいい点取れるぞ」なんて言われたことなどなかったのではないでしょうか。