ドキュメンタリー/教養

テレビ寺子屋【AI社会に生きる子どもたちに/汐見稔幸】

「AI社会に生きる子どもたちに」
汐見稔幸(東京大学名誉教授)

9月22日 日曜 5:15 -5:45 富山テレビ放送1

テレビ寺子屋【AI社会に生きる子どもたちに/汐見稔幸】

将来の社会を「AI社会」と呼んでみたいと思います。AIとは「人工知能」のことで、あらゆるものに自分で考えることができるコンピュータを組み込んでいくわけです。例えば自動車は将来的には全部自動運転になり、自分で運転している人を見ることがなくなるかもしれません。とても便利になっていきますが、そうなっていくことが人間に何をもたらすのかということについては、それほど丁寧に吟味されているわけではありません。
心配なことのひとつを私は「文化と文明は違う」と表現しています。あまり区別しないで使うことが多いですが、「文化」は手間暇かけて苦労して価値あるものを作り出す営みのことを言います。「文明」は人間の欲望欲求をできるだけ手っ取り早く楽に実現することです。忙しい私たちの生活の中には両方必要ですが、大切なのはそのバランスです。例えば便利な冷凍食品を素早く食べる一方で、自分で手間暇かけてでも美味しいものを作る。
そういうことができる自分がうれしい。「文明」が栄え、「文化」が滅ぶということにならないようにしていかないといけません。まずは子どもたちに直接体験をいっぱいさせてあげてほしい。いろんな人と関わる体験をさせてあげてほしい。そして文化というものを大事にする人間に育ってほしい。AI社会の中で人間らしく上手に生きるため、幼いころからそういったことを意識して育ててあげてほしいと思います。