ドキュメンタリー/教養

情熱大陸

なぜ聖地は聖地であり続けるのか
「100年」を支える献身と愛情

9月22日 日曜 1:15 -1:45 AKT秋田テレビ1

情熱大陸

「あの土と芝生の独特のにおい。あれは、甲子園だと思う」松井秀喜は取材に対しそう語った。史上最も多くショートの守備についた鳥谷敬は「引退してからも自由に体を動かせるのは、あの土で長くやったおかげ」と感謝する。 日本一有名な野球場、甲子園。その場所が聖地と呼ばれるのは、少年を大人にする舞台であり、伝統の戦いを彩る劇場であり、そして、歴史の証言者でもあるからだろう。
先月、100歳を迎えた。この節目に、聖地を支える現場を8か月にわたって見つめた。 1月、阪神園芸の職員たちが白い息を吐きながら、内野の土を耕運機で掘り返していた。甲子園のグラウンドを26年間守り続けてきた金沢健児は「春までの3か月が、その年のグラウンドの命運を握っている」と語る。彼らが目指すのは「“水はけ”と“水持ち”のいい」グラウンド。自然と格闘しながら、二律背反に挑み続けてきた。
ファンの間で語り草の“神整備”には、気の遠くなるような準備がある。3月、センバツ高校野球やプロ野球のオープン戦を目前に控えたこのころには、場内放送を担当して14年目の窪田真子が後輩への技術指導を行っていた。選手名のアクセントやアナウンスのテンポなど、先人から受け継いできたものはあまたある。場内放送が始まって70年余り、彼女らの「声」は紛れもなく甲子園を彩っている。
プロ野球だけで年間のべ300万人近くの観客が集まる。25年前から球場の安全を守り続ける警備隊長の中本景久は、管理職への昇進を拒んでまで愛する甲子園の現場に立ち続ける。願いは「何も起こらず、楽しく帰ってもらうこと」、だが、そんな思いをよそに思わぬ一報が届く。 そして8月1日、100周年を記念する伝統の一戦が幕を開けた― 一世紀にわたり球児たちの憧れであり続け、いまも人々を魅了してやまない甲子園球場。
戦争、震災、コロナ…幾多の悲しみを乗り越え、変わらず聖地であり続ける背後には、連綿と繰り返される営みと、支える人たちの深い愛情がある。

  • 出演者

    阪神甲子園球場